李在明大統領、2026年春にベトナム国賓訪問——インフラ・防衛産業協力でASEAN戦略を加速
2026年4月21日
李在明韓国大統領が4月21日にハノイ入りし、3泊4日の国賓訪問を開始。8か月前のト・ラム国家主席訪韓への答礼であり、インフラ・防衛産業の協力深化が焦点となる。
韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が2026年4月21日、ベトナムの首都ハノイに到着し、3泊4日の国賓訪問日程をスタートさせた。昨年8月にベトナム共産党書記長兼国家主席のト・ラム氏が訪韓してから約8か月。今回はその答礼訪問として実現したもので、両国関係が新たな局面を迎えつつあることを象徴する外交イベントだ。
8か月で再び向き合う両首脳——なぜ今、ベトナムなのか
韓越関係は2022年に「包括的戦略的パートナーシップ」へと格上げされて以降、急速に実質化が進んでいる。2025年の両国貿易額は800億ドル規模に達しており、韓国にとってベトナムは中国・米国・日本に次ぐ第4位の輸出市場だ。在ベトナム韓国企業は9,000社を超え、サムスン電子やLGなどの製造拠点を中心に雇用・税収両面でベトナム経済を支える存在となっている。
一方で2026年現在、グローバルサプライチェーンの再編が加速する中、ベトナムは「チャイナ・プラスワン」の最有力拠点として日米欧からの投資を集めている。韓国がこのタイミングで国賓訪問を行う背景には、経済的な既得権益を守りながら、次世代の協力軸を打ち立てるという戦略的意図がある。
インフラ・防衛産業——協力の「本丸」はどこか
今回の訪問で最も注目されるのが、インフラ分野と防衛産業協力の具体化だ。インフラについては、ベトナムが国家的プロジェクトとして推進するハノイ〜ホーチミン間の高速鉄道(南北高速鉄道)への韓国企業参画が議題に上がるとみられる。総工費は5兆円規模とも試算されており、日本・中国・欧州勢との受注競争が本格化している中、韓国は技術力とODA(政府開発援助)の組み合わせで優位性を主張したい考えだ。
防衛産業については、韓国がポーランドへのK2戦車・K9自走砲輸出で世界的な注目を集めて以来、東南アジアへの展開を積極化している。ベトナムは南シナ海問題を抱え、近代化が急務の軍を保有しており、政治的に中立性の高い韓国製装備は選択肢として現実的だという見方が安全保障専門家の間で広がっている。ただし、ロシア製装備への依存が深いベトナム軍の構造転換には時間を要するため、今回は協力の枠組み設定が最初の到達点となるだろう。
さらに半導体・デジタルインフラ分野でも覚書(MOU)締結が複数見込まれる。ベトナム政府はAIや電子政府の整備を国家戦略に位置付けており、韓国のIT企業にとっては参入の好機だ。李大統領に同行する経済使節団には大手財閥系企業が多数含まれており、「経済外交」の色彩が濃い訪問となっている。
日本への含意——ASEAN争奪戦の中の韓国
日本にとっても、この韓越急接近は対岸の火事ではない。日本はベトナムに対して長年ODAを供与し、インフラ整備で深い関係を築いてきた。しかし韓国は「文化的近親性」と「コスト競争力」を武器に、近年その存在感を急速に高めている。2026年春の国賓訪問は、ASEAN市場における日韓競争が新段階に入ったことを示す一幕でもある。日本企業・政府関係者は韓国の動向を注視しながら、自国の戦略的ポジションを再点検する必要があるだろう。
李在明政権にとって、今回の訪問は国内向けにも重要だ。経済再建を掲げて政権を担う李大統領にとって、大型インフラ・防衛輸出の実績はそのまま政治的な成果となる。ベトナムという「フレンドリー市場」での外交的成功が、今後のASEAN・グローバルサウス戦略の試金石になると位置づけられている。
8か月という短い間隔で再び向き合う李在明・ト・ラム両首脳。その会談の中身が、2026年の韓越関係、さらには東南アジアにおける韓国プレゼンスの行方を左右する。
よくある質問
Q: 李在明大統領のベトナム訪問で、具体的にどんな合意が期待されますか?
A: インフラ(南北高速鉄道参画)・防衛産業協力の枠組みMOU、半導体・デジタル分野での投資協定などが見込まれます。財界使節団も同行しており、民間レベルの契約締結も複数発表される見通しです。
Q: ベトナムへの韓国の防衛産業輸出は現実的なのでしょうか?
A: 短期的にはロシア製装備への依存が壁となりますが、南シナ海情勢の緊張や軍の近代化需要を背景に、中長期的な可能性は高まっています。今回は具体的な売買より「協力枠組みの設定」が主な目標となります。
Q: この韓越接近は日本のベトナムビジネスに影響しますか?
A: インフラ受注競争では日本の既存優位が脅かされる可能性があります。ただし分野によって棲み分けも進んでおり、日本は品質・技術力・長年の信頼関係を武器に差別化を図ることが引き続き重要です。